『新プラトン主義と錬金術:神智学の起源をたずねて』
おとといアレクサンダー・ワイルダーの『新プラトン主義と錬金術』を読んでいたら、
プロティノスの師であるアンモニオス・サッカスと彼の弟子たち(「真理の愛好者」)
についてのこんな一説と出会った。
曰く、
かれらはときどき「類比学者」とも名づけられた。それはかれらに、あらゆる伝説、物語、神話、秘儀を、
類比・照応の法則ないしは原理によって解釈する習慣があり、外界で起きたと語られる出来事も
人間の魂の活動・経験を表現するとみなしたからである。
これまさに心理占星術の仕事そのものだろう。
占星術家よ、かくあれかし。
しかしこの本はKindleで買って、しばらく放置していたのだけど、
巻末に掲載されている訳者の堀江聡先生と元神智学協会会長の佐藤直継氏の対談だけでも一読の価値あり。
ヘーゲルと同時代の18世紀末の哲学史において、新プラトン派のことをアレクサンドリア派という呼び方で呼んでいた可能性がある、
とか、中村元先生の論文で華厳経とプロティノスの思想を比較して、両者の類似性について触れているものがある、
など、なかなか素人では知りえない点にも指摘されていて非常にありがたい。
一読した後の印象としては、
ギリシャ、エジプト、メソポタミア、インドを地域的・思想的に包含するアレクサンドリアという都市と、
その特異な場所が育くんでいった知恵の体系としての新プラトン主義、そしてその大本としてのヘルメス哲学、
その深みと可能性について改めて目を開かされたような心持ちだ。
(著者の名前のように、アレクサンドリアをよりワイルドに捉え、新しい息吹が入れられたかのよう)
彼らの残していった神秘主義思想は、古代から地下水脈のように流れてきて、ルネサンスのフィチーノや現代の例えば心理占星術にもその気配を感じ取ることができるし、
さらに自力的なプロティノスと他力的なイアンブリコス(あるいは楽観主義と悲観主義)といった対比的な構図も、わりと引き継がれているように感じた。
これを読んでからプロティノスの『エネアデス』や弟子のポルフィリオスのプロティノス伝を読むと、また違った印象を受けられるように思う。
- 作者: アレクサンダー・ワイルダー
- 出版社/メーカー: UTYU PUBLISHING
- 発売日: 2014/06/09
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