天地一つの風に包まる
気づいたら風が吹いていて、季節が変わっていた。
ここ数日、特にそんな感じがしていた。
今日午後に打ち合わせに伺った会社の方とも、これで桜が散ってしまうね、
という話をしていた。なんだなんだ、もう桜の季節も終わりか。
ちょっとさみしい。
帰って、最近友人から聞いて手に入れた野口晴哉の『偶感集』をめくっていたら、
「風」と題された次のような文章が載っていた(一部引用)。
先ず動くことだ
隣のものを動かすことだ
隣が動かなければ先隣を動かすことだそれが動かなければ次々と動くものを多くしてゆく
裡に動いてゆくものの消滅しない限り 動きは無限に大きくなつてゆくこれが風だ
誰の裡にも風を起こす力はある
動かないものを見て 動かせないと思つてはいけない
裡に動くものあれば必ず外に現れ 現はれたものは必ず動きを発する自分自身 動き出すことが その一歩だ
ああ、今日吹いていた風は、どこかの誰かがそっと動いて起きた風かも知れないと思った。
そんな風に吹かれて揺れて、そわそわして、自分も思わず一歩踏み出したんだろうか。
それなら、自分が起こした風で、あるいは今日他の誰かが、どこかでゆらいだり、
舞ったり、飛んだり、声を発して、きしんで音を出して、共振したりしていたのかも知れない。
野口晴哉はそんな世界の在りさまを、「天地一つの風に包まる」と表した。
今日の心中には、間違いなくそんな風が吹いていた。
- 作者: 野口晴哉
- 出版社/メーカー: 全生社
- 発売日: 1984/09/15
- メディア: 単行本
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